未病とは?
pre-symptomatic state
未病について
未病は東洋医学の考え方。今後医療費を削減し医療保険を使わない政策の一つとして提唱されてきています。未病産業の推進が盛んになってきました。
不思議に聞こえるかもしれませんが、病気であっても、健康であっても未病は存在するということです。
2000年以上前の中国の書物『黄帝内経素問』(こうていだいけいそもん)の中に「聖人は未病を治す」と書かれていて、予防の重要性が既に認識されていたことがわかります。
「未病」とは、発病には至らないものの軽い症状がある状態です。
五臓六腑がつながっているという考えが根本にあり、軽いうちに異常を見つけて病気を予防するという考え方です。
自覚症状があり、検査値に異常があるのは「病気」ということになります。
「未病対策」とは、病気に向かうベクトルを逆の健康方向に向け直すことです。
私たちの心身の状態は、健康と病気の間で、また病気の中にも病名と関係のない症状があり連続的に変化しています。「未病」は、その状態を表す言葉です。
日常の生活において「未病改善」により、健康な状態に近づけていくことが大切です。
気・血・水について
気・血・水とは人体を構成する基本的な物質で、これらにより生命活動および臓腑・経絡・組織・器官の生理的機能が維持されます。
ここに不調をきたすと次の様な症状が現れます。
気の不調
- 気虚
- 無気力や疲労感、だるさ、食欲不振など
- 気滞・気うつ
- 頭が重い、のどが詰まった感じがする、息苦しい、
おなかが張るなど
- 気逆
- のぼせや動悸、発汗、不安感など
血の不調
- 瘀血(おけつ)
- 月経異常、便秘、肩こり、色素沈着、
おなかの圧痛(押すと痛む)など
- 血虚
- 貧血、皮膚の乾燥、脱毛、血行不良など
水の不調
- 水毒・水滞
- むくみ、めまい、頭痛、下痢、排尿異常など
肩凝りも症状の違いで原因が違います。
例えば、気の滞りが原因の肩凝りは、首筋がパンパンに張った痛みがあります。
長時間のデスクワークで同じ姿勢を続けた肩凝りは血の滞り。水が過剰な肩凝りは頭がズーンと重く、めまいや吐き気を伴うこともあるのです。
未病改善の取り組み
すべての世代が未病を自分のこととして考えて「未病を知る」「未病に気がつく」ことが大切です。
【四診】にて【証】を明らかにし、【治療】を行う。
この流れが東洋医学では未病改善の取り組みです。
「食・運動・社会参加」の3つを柱とする未病改善の内、食に注目してどなたでも取り入れる東洋医学の考え方と未病対策をお伝えします。
四診
- 望診
- 表情、動作、話し方など、目でわかる症状を診る
- 聞診
- 耳と鼻で見極める診察。咳や声の音、口臭など
- 切診
- 脈やお腹など、患者に触れて診断する
- 問診
- 症状、家族歴、既往歴、生活習慣を質問する診察
証
- 虚実
- 体力や体質、新陳代謝、抵抗力を示す
- 陰陽
- 慢性病の状態や自律神経の偏りなどを示す
- 気血水
- 全身を巡る気血水のバランスを示す
- 五臓六腑
- 喜怒哀楽などから五臓六腑のどこに異常があるか示す
- 寒熱
- 実際の体温ではなく、自覚症状から判断する
- 表裏
- 症状が現れている部位を示す
- 三陰三陽
- 急性病の進行具合を示す
治療
- 漢方薬
- 複数の生薬を配合した薬を服用する
- 鍼灸
- 鍼や灸でツボを刺激して体内の巡りを調整する
- 養生
- 毎日の生活や食事で体質を改善する
食事と五行論
漢方の基本となる考え方に「五行説」があります。これは万物を木・火・土・金・水の5つの要素に分類し、それらの関係を説いた理論です。
この5つは、お互いに助け合い(相生)抑制したり(相剋)して絶妙のバランスを保っています。
木・火・土・金・水に対応させて、人体の働きを5つに分けたものが、五臓と五腑(六腑)です。
五臓を中心に人間の体は機能しており、肝・心・脾・肺・腎で表されます。
五臓と言っても臓器のことだけではなく、体のはたらきを示しています。
例えば五臓の「肝」は体内の“気”や“血”を循環させるのですが「木」に割り当てられていて木のように伸びやかに下から上に向かっている状態が健康な状態です。しかしストレスなどで障害されると未病を生じます。
食事に関して味も酸・苦・甘・辛・鹹と五行で表されています。
同じく「肝」で説明すると、肝と酸味は関係が深く、酸味は収斂の作用を持ち引き締める効果があります。収斂作用は肝気を補って血を肝に集める働きがあります。
自分の体も肝・心・脾・肺・腎のどれかに体質を分ける事ができます。
五行説から自分のタイプ(体質)がわかれば、病気をしたときの治療・養生法がわかります。まだ病気を発症していない状態(未病)であっても、悪い生活習慣を続けていけばどのような病気になるかが把握でき、予防対策をたてられるのです。
餃子×東洋医学
食事でできる未病対策として、餃子を東洋医学的視点で見てみました。
餃子の基本的材料と東洋医学的効能を紹介します。
- 餃子の皮
(小麦粉) - 思い煩いやストレスは不安感が強くなったり、イライラしたり。小麦は心を養い精神を落ち着かせます。気を補い(補気)心を落ち着かせる(養心)効果があり、心・脾に作用します。
- 豚肉
- 血を補い(補血)全身の水と営気を補う(補陰)効果により滋養強壮・スタミナアップ。また、体に潤いを与える(滋陰潤燥)のでのどの乾きやお肌の乾燥にも効果的。脾・胃・腎に作用します。
- キャベツ
- 胃の働きを助け(健胃)、消化を促すので胃の諸症状だけでなく、五臓六腑の機能を調節する働きがあります(五臓六腑)肝・胃・腎に作用します。
- ニラ
- 腎・胃・肺・肝を滋養して、体を温め(補腎・温腎)血流をスムーズにする(活血・理気)効果があります。
- ニンニク
- 脾・胃・肺・大腸を巡るにんにくは温める作用が強く、抗菌、解毒、強壮作用があり古くから薬味として用いられています。
- しょうが
- 生薬として使われ「邪気の侵入を防ぐ」と言われる。寒気を追い払い体を温める(散寒解表)効果があり、肺・胃・脾に行き渡ります。
- ごま油
- 水や営気を補い(補虚・潤燥)便通を良くする(通便)効果がある。大腸・肝に作用します。